経営行動科学学会での研究発表

香川大学にて開催された経営行動科学学会第28回年次大会にて、「日本企業におけるタレントマネジメントの実践成果:試行的分析」と題した研究発表を行いました。なお、この研究はJSPS科研費20K13607および24K16434の助成を受けたものです。

この研究発表では、日本企業において人事業務を担当する部署に勤務する部長職以上の380名から取得したデータをもとに、タレントマネジメントの実践(「タレントマネジメント」と自認するものに取り組んでいるか否か/欧米圏で開発された施策尺度のスコア)が (1) 人事成果や (2) 人的資本資源、(3) 競合他社と相対比較した営業利益の良し悪しの3つの組織レベルの成果とどのように関連しているのかを検討しました。

分析の結果、これらの組織レベルの成果に対して、タレントマネジメント施策尺度のスコアが有意な正の影響をもっていることなどが明らかになりました。データ取得や分析方法による制約を割り引いて考える必要はあるものの、単純には「タレントマネジメントの実践が組織成果を高める」ことが日本企業において確認されたと解釈することができそうです。今後は、タレントマネジメントのどういった側面が成果につながるのかや、タレントマネジメントの実践が最終的な財務指標につながるまでの経路がどうなっているのかなどについて、さらなる検討を進めていきたいと考えています。


また、この学会では源明典子・太田久美(スコラ・コンサルト/エンジニアLink)の両氏との共同報告で、「特異な経験がもたらす仕事の意味づけの再解釈:電機メーカーにおけるエンジニアの事例」と題した研究発表も実施しました。こちらは、期間限定のプロジェクトチーム(=特異な経験)に参画したエンジニアたちが、プロジェクト内では革新的な職務成果につながるような意欲や行動を一様に示しているようにみえた一方で、プロジェクト終了後にはその意欲や行動が維持されたり減衰したりと多様なパターンを示していると考えられた事例について、当事者へのインタビューをもとに検討したものです。ジョブ・クラフティングやアイデンティティ・ワークなどの概念を参照しながら、「業務や働き方に対する意味づけの変化」という観点から議論を行いました。

柿沼 英樹
柿沼 英樹

同志社大学商学部准教授 | 人的資源管理論専攻
タレントマネジメントや雇用主ブランディングに関する研究に取り組んでいます。