論文掲載

『組織科学』Vol.57, No.1 に、査読付き論文「タレントマネジメントと戦略的人的資源管理の言説空間の可視化:計量書誌学的手法による異同の検討」が掲載されました。改訂を繰り返すこと3回、査読結果を待つ期間も含めて1年ちょっとを要しました。

柿沼英樹 (2023). 「タレントマネジメントと戦略的人的資源管理の言説空間の可視化:計量書誌学的手法による異同の検討」『組織科学』57(1), 66-79.

この論文では、概念的境界の曖昧さが指摘される「タレントマネジメント (TM)」と「戦略的人的資源管理 (SHRM)」のあいだの相違点を見出すために、計量書誌学 (bibliometrics) 的手法を用いた研究レビューを展開しました。具体的には、関連する1,662論文で使われている著者キーワード (author keywords) の共起関係を読み解き、各概念を示す語と特徴的に共起する語群の傾向の違いから、両概念の独自性を明らかにしようと試みています。

たとえば、キーワードの共起頻度からは、TMとSHRMの双方に5回以上共起する18語が両概念の境界を曖昧にしていることを確認すると同時に、TMだけに5回以上共起する53語とSHRMだけに5回以上共起する12語によって、それぞれの概念に紐付けて論じられる傾向にあるトピックを描出することができました。この他にも、キーワードの共起ネットワークやその時系列変化から、TMとSHRMの交わる部分・交わらない部分を視覚的に捉えることにも取り組んでいます。

細かい内容とは別に、この論文の特徴的なポイントを挙げるとすれば、(1) タレントマネジメントに関する数少ない日本語の学術論文のひとつであること、(2) 文献レビューや理論・学説研究での『組織科学』査読付き論文掲載はあまり多くない(らしい)こと、(3) 計量書誌学的手法の概略や分析手続き、結果の解釈のあり方を知るガイドライン的な論文になりうること、でしょうか。(3) については、TMやSHRMへの関心が乏しい方にも広く手に取っていただくきっかけになるのではないかと期待しています。

実務的な示唆に乏しい学説研究ですが、多くの方にご笑覧いただけると幸いです。

以下のリンクより、PDFがダウンロードいただけます(別タブで開きます)。
J-STAGE論文ページ

柿沼 英樹
柿沼 英樹

流通科学大学商学部教授 | 人的資源管理論専攻
タレントマネジメントや雇用主ブランディングに関する研究に取り組んでいます。