論文掲載
所属機関である流通科学大学の研究紀要に、論文(査読なし)が掲載されました。
柿沼英樹 (2022). 「タレントマネジメントをめぐる類型化に関する一考察」『流通科学大学論集 流通・経営編』35 (1), 59-72.
この論文では、「多様な定義づけや実践がみられるタレントマネジメント (TM) は、学術的な議論のなかでどのように類型化されてきたのか」という点について、文献レビューを行いました。その結果、以下のふたつの傾向があると考えられると整理しています。
ひとつは、「タレントマネジメント」の定義づけに注目した類型化から、管理対象である「タレント」の捉え方に注目した類型化へと議論が移行していることです。全体的な方向づけとして、「TMとは○○である」というような厳密な定義を策定するのではなく、「組織におけるタレントを効果的にマネジメントすること」としてTMを簡素に捉えて、どのようなタレントを対象とするのかという文脈 (context) ごとに異なるTMがみられると捉えようとしていると考えられます。
もうひとつは、タレントとしてみなす従業員の範囲の広狭と、タレントとしての評価要素の開発可能性の多寡の2軸の組み合わせによる4つのタイプからなる「TM哲学 (talent management philosophy, またはtalent philosophy)」概念に関心が寄せられていることです。TM哲学は、経営陣や人事部門が持つTMに関する基本的仮定やメンタルモデルをあらわすものとして定義されます。実際に運用するTM施策 (practice) を策定する際の基盤として機能することから、企業ごとに異なるTMの実践やその成果を理解するうえでの鍵概念となることが期待されています。
TM研究自体が乏しい日本に限らず、国際的にもTM哲学を用いた研究はあまり多くありません。今後は、表層的に観察可能なTM施策と区別して実践を捉えて議論することで、TMの全体像をより子細に解き明かすことができるようになるのではないでしょうか。
ご興味のある方は、以下のリンクからご覧ください(別タブで開きます)。
論文ページ(機関レポジトリ)